デザインするときに大切にしていること
私が結婚指輪をデザインする際、長く身に着けられるように着け心地が良いこと、そして着ける人の指が美しく見えること、という2つのことを大切にしています。
特にカーブのかかる指輪には、細かなこだわりがあります。優雅で流れるようなライン、優しく指に沿うようなしなやかさ、指元が美しく見えるよう何度も指に当てながら試行錯誤します。
ithのコレクションの中でも、特に指が美しく見える形を追求した3本のカーブの指輪があります。
Moderato《モデラート》、Legato《レガート》、Grave《グラーヴェ》です。
どのリングも、やさしい丸みがあってぽってりとしていますが、着けた時に指が細く、長く見えるよう細かい工夫を施しています。手仕事でしか作れないデザインには、かけた時間とこだわりが強い分、愛着も強くなります。
Moderato《モデラート》
3本の中では、トップにボリュームのあるデザインです。'穏やかな、穏和な'という意味の結婚指輪で、左右からゆるやかに伸びるアームが、つないだ手のように中央で重なる形です。二人の絆をイメージしたかわいらしいデザインです。
Legato《レガート》
イタリア語で'結ぶ'という意味のレガーレを語源にしたU字カーブのデザインです。3本の中では一番細身の指輪です。指輪の幅が細い部分、太い部分と強弱があり、着けると指がすっと長く見える指輪です。
Grave《グラーヴェ》
レガートと同じU字フォルムですが、幅と厚みに最もボリュームのある指輪です。トップに入る斜めのラインの角度にこだわり、重厚感がある中にシャープな切り返しのエッジを施しました。左右非対称に施されたカーブが、見る角度によって異なる表情を生み出します。
見えないところにこそ気を配って
3本共、手のひら側にもつけたゆるやかなカーブが、目立たないけれどもとても大切なこだわりの部分。このカーブによって、指元に滑らかなフィット感が生まれます。また指輪の後ろ姿にもふっくらとした、かわいらしさが出てきます。
目に見えやすいリングのトップ側にはもちろん気を配りますが、目につきにくい手のひら側や内側にも細かいこだわりを施すことで、その美しさや着け心地が格段に良くなります。
後ろから見たモデラート。丸みがありふくよかなラインです。
レガートには手のひら側もU字にカーブをつけることで、心地よいフィット感が生まれます。
グラーヴェは幅に強弱があることで、伸びやかにラインが映えます。
自分自身の目と手の感覚を頼りに、指に着けてこそ感じられる美しさや着け心地を追い求めていますが、リングをご試着していただくお客様が、そんなこだわりを感じて下さった時は、とても嬉しく、やりがいを感じます。
つくり手 高橋亜結