代表を務める女性職人、高橋亜結の小さなアトリエから始まったith。
画家や工芸家など様々な芸術家が、創作活動を行う作業場を総称してアトリエと呼びますが、私たちもこの'アトリエ'という場所に対して、並々ならぬ思い入れを持っています。
創造の場として
私たちにとってのアトリエとは、まず第一に'創造の場'としての意味を持っています。芸術家にとってアトリエという作業場が新しい何かを生み出すための場所であるように、私たちにとってのアトリエは、日々お客様と向き合いながら、まだ見ぬ新しい指輪を生み出す創造の舞台です。
私たちのアトリエでは、実際にリングを試着してもらったり、お客様の趣味やお好みを伺ったりしながら、お二人のための指輪をどのようにお仕立てするか決めていきますが、カップルとつくり手で、ああでもない、こうでもない、こうしよう、ああしようと、意見やアイデアを巡らせる様子は、さながら新たな創作に取り組むクリエイター達のデザイン会議のよう。そこには、ワクワク感に満ちた空気があふれています。
ものづくりのクオリティを高めるため、リングの実制作は恵比寿の工房に移した今でも、それぞれの店舗を'アトリエ'と呼んでいるのは、創造の舞台としての意味合いを大切にするためです。
おもてなしの場として
私たちのアトリエは、創造の場であると同時に、'お客様をおもてなしするための場'でもあります。
高橋のアトリエには、作業をするための彫金机に小さなテーブルとソファがあるだけでしたが、時折訪れる友人やお客様のために、小さなテーブルに一輪の花を飾ったり、壁にはお気に入りのイラストを留めたり。商品を美しく並べるショーケースも、お客様の目を引く豪華な調度品もありませんでしたが、女性らしい気遣いとささやかなおもてなしの心を忘れずに、訪れる人たちを丁寧にお迎えしていました。
そんな原点の気持ちを大切に、いまでもithのアトリエではそれぞれの雰囲気にあった絵をかざったり、季節季節の花を活けたり、ときにはちょっとした遊び心で来る人に和んで頂いたりと、お客様がアトリエにいる時間を楽しんで頂けるよう、ささやかながら気を配っています。
ithの原風景
そんな質素で飾り気のないアトリエから始まったithでしたが、だからこそ、お茶を飲み談笑しながら、ジュエリーに仕立てられる前の天然石のエピソードを聞いたり、ジュエリーをつくる工程を実際に見せてもらったり、普通の宝飾店では緊張して聞けないことやできない体験ができ、そこに濃密なコミュニケーションが生まれる。だからこそ、本当に自分たちの望みにあった二人らしいジュエリーが出来上がる。
それこそがまさにithの原風景であり、アトリエという環境だからこそ生み出すことのできる、特別な体験なのではないかと思っています。
たくさんよりもひとつをたいせつに
そんな小さなアトリエで、一組一組のお客様とその指輪に向き合いながら生まれてきたのが、"たくさんよりもひとつをたいせつに"という私たちの理念です。
お客様の一組一組、つくる指輪の一個一個を大切にする、という気持ちが込められていますが、アトリエ自体にもその思いが込められていて、全国8ヶ所あるアトリエは、ithらしい空気感を保ちつつ、それぞれの街や人の個性や雰囲気を反映した造作や装飾が施されています。
またそれぞれのアトリエには、つくり手たちが自分たちで壁を塗ったり、レンガや積み木を積み上げたりしてつくった思い入れのある部分もあります。そこには、自分たちとお客様の居場所を、自分たちの手で良いものにしたいという気持ちもこもっています。
世界にひとつの結婚指輪を生み出す舞台だからこそ、私たちのアトリエもオンリーワンの場所であれるように。そんなithのアトリエに足を運んでもらえるとうれしいです。
ith 吉田