ithの10周年を記念し、これまでに指輪をお仕立てしたお客さまの中から11組のご家族をアトリエへお招きして“二人の指輪の肖像”と題した撮影会を開催しました。
参加してくださったご家族のみなさん、関わってくださったみなさん、ありがとうございました。
“つくって終わり”、“ご納品して終わり”ではなく生涯に渡ってお客さまとの関係が築けたらいいなというのが、ithがはじまった時からの私の理想です。
10年間にご納品したお客さまへ撮影会のご案内をお送りして、どのくらいの人がithを覚えているか、イベントに興味を持ってくれるかとそわそわしていましたが、応募を開始すると考えていたよりもずっと多くの方が参加を希望してくれました。ずっと繋がり続けているんだと実感できて、嬉しいというより驚きました。
準備はみんなの意見を何度も、何度も重ね当日を迎えました。
最初はお迎えする私たち、アトリエを訪れたご家族どちらも緊張していましたが、カメラマンの鳥巣さんがリードしてくれたおかげで打ち解け、それぞれのご家族の日常が垣間見えるとても温かい撮影の現場になりました。
せっかくアトリエに来てくれたからと写真を撮りつつ、いろいろインタビューをすると11組のご家族それぞれの想いを知ることもできました。
指輪には、デザインが決まった経緯、気に入っているポイント、相手とのお揃い感など、1つの小さなアイテムに想いが丁寧に込められていて、それを皆さんよく覚えていることにびっくり。そして、当時を思い返して恥ずかしそうに話したり、笑い話として話したりする家族のかたちを見ることもできました。
お仕立てした当時や、今の指輪への気持ちを直接言葉にして聞く機会は10年の中でもはじめてで、改めてつくり手としての充実感といつまでも記憶に残る思い出に携わっているという誇らしい気持ちになりました。
普段アトリエで接するだけでは得られない感動を、この撮影会ではもらうことができてよかったです。
撮影会に参加していただいた中に、婚約指輪のお仕立てから私が担当しているお客さまがいました。9年前、表参道のアトリエでご相談を受けてから節目ごとにアトリエを訪れてくれています。
プロポーズ、ご入籍、結婚記念日とお二人の歴史が増えるごとにithで再会、お互いの近況を共有できることを楽しみにしているのですが、私にとってこのお二人の存在は特別な意味を持っています。
ithがまだ吉祥寺と表参道の2つのアトリエしかなかった頃を知っている分、「アトリエが増えることで失われるものがあるのではないかと寂しい思いもある」と正直に話してくださったのが私の心にずっと残っているのです。
アトリエが増えithが広がっていく中で、今に合わせる柔軟さと、はじまった頃の良さを両立できるように考えて舵取りをするのが自分の役目。これから起きる変化の中で、お二人の言葉を頼りに方向を見失わないよう進んでいきたいと思っています。
今年は撮影会以外にも、いろいろな企画や来年に向けた計画があり、10周年を機にこれからやりたいと思っていることやithがどうなっていきたいかなどを考えることがあります。
普段は目の前のことに集中して取り組むほうが私は得意で、未来を思い描くことや夢を語ることはほとんどないのですが、今は、はっきりと想像できています。
これからの10年、次の世代に繋がるithを目指す。
吉祥寺の路地裏ではじまった小さなithを続けて10年。10年の間に自分自身も結婚、出産を経験したから自然と想像できた景色なのかなと思います。
最初の頃のお客さまに子供が生まれていれば10歳で、その子が早ければあと10年くらいで結婚するかもしれないし、就職して社会人になるかもしれない。その時に「お父さんやお母さんと同じところで指輪をつくりたい」とか、つくり手になりたいと思ってもらえたら20年目のithはきっと良い方向に向かっていると感じられるはず。
生涯に渡る関係が築けているとその時また感じることができるように、あと10年進んでいきたいと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いします。
ith 高橋亜結
Special Contents 指輪とお二人のその後の日々