ithは6月4日で12周年を迎えます。今までいろいろなお客さま、指輪に携わった時間は何にも変えられない私の人生の宝物です。これからも、1日1日を大切に過ごしていきます。
去年1年のできごとを振り返ってみると、新しいことへの挑戦がいくつかありました。
私の中で最も印象に残っているのは、アーティストのyamaさんと、小説投稿サイト「monogatary.com」とのコラボレーションです。楽曲『Ever』のリリースに合わせて、オリジナルデザインの指輪を制作しました。
楽曲は、yamaさんの透き通るような声、丁寧に紡がれた詞が心に響く、すばらしいものでした。
悲しいことや辛いことに出会った時に、乗り越えられなくても受け入れて前へ進んでいけるような人生を送ってほしい。当時3歳だった娘と、お腹の中にいた息子が、たくさんの経験をしながら大人になっていく様子を親の視点で願うような歌詞に思えて、涙が溢れたのを覚えています。
そんな楽曲を聴いて考えたオリジナルの指輪。デザインの元になったのは、ithの象徴でもある’マリアージュマーク’です。2つの指輪がぴったりと寄り添うかたちをしています。
結婚指輪の内側には、どこで作られたものかを示すためにブランドロゴを入れるのが一般的ですが、ithではロゴとは違うこのマークを刻印しています。
吉祥寺アトリエがはじまる時、ロゴを入れるよりも結婚指輪を身に着ける二人が末永く幸せに歩んでいけるように、’2つで1つ’という意味を内側へ入れたいと考えたもので、ithにとって特別な印です。
この特別な印である’マリアージュマーク’をベースに、yamaさんとの対話を経て異なる幅とテクスチャの2本のリングが1つになったオリジナルの指輪をデザインしました。
幸せな時とそうでない時、長所と短所のように表裏にあるものをどちらも受け入れ自分らしくいられるように、という気持ちを込めた性別やシーンにとらわれない指輪が完成しました。
それ以外の試みとして、自分たちで指輪を制作する体験「相合(あいあい)」がはじまったこと、指輪を育てていくという考え方の「aria(アリア)」シリーズのリリースもありました。
はじまりの場所である吉祥寺アトリエ限定で、職人のサポートを受けながらお客さま自身で指輪を制作する「相合」では、硬く冷たいイメージのある金属にぬくもりが宿る体験ができます。
完成するまでの時間は、ithのものづくりの精神に触れる機会にもなるはずです。
そして’空気’というイタリア語の意味を持つ「aria」シリーズは、はじめのオーダーではシンプルなデザインに。その後で少しずつアレンジを足して指輪を育て、楽しむという考え方。
記念日やターニングポイントを迎えた時、アレンジを追加していくことで指輪に歴史が刻まれていきます。永くお付き合いのできるアトリエでありたい、というithがはじまった当初から理想とする姿勢を、より強く指輪を通じて実現できるのが「aria」シリーズだと思っています。
どのできごとも2014年にithがはじまった時からの大切なものを、今のかたちに合わせて再定義するような試みになりました。
そんな去年をふまえて今年は、さらに深く柔軟に、ithの良さを見直して新しい価値に繋げることができたら、と考えています。
私の娘は絵本が大好きなのですが、最近本の中に出てくる文字を自分で1つずつ指差しながら、ひらがなを読むことを覚えました。
ストーリーを楽しむための絵本だと思っていた私と、読めるようになった文字をママに伝えたいと思う娘。
私は’こうあるべき’や’こうしなきゃ’という概念にとらわれるのはあまり好きではないのですが、つい当たり前に物事を見ていたなと振り返るきっかけになりました。いろいろな角度から見る発想力の広さ、豊かさを持ち続けられる大人でいたい。深く柔軟な考え方をもってithを見直すことで、新しい道が開けるのではないかと思っています。
はじまりの頃と今。たくさんの変化が起きたとしても、いつでも自立して強くいられるように。
土の下で深く根を張るような、ithの原点をじっくり見つめ直し行動する1年にしたいと思います。
ith 高橋亜結