前編では、産休・育休を経て職場復帰を果たした高橋さん・矢野さん・松岡さんより、復帰に至るまでの思いやご自身の就業環境などを中心にお話を伺いました。後編では、仕事と育児・家事の両立を図る中で変化した、仕事への向き合い方や価値観、今後の夢についてお聞きしています。さらに、これから産休・育休を取得する後輩たちへのアドバイスも寄せてくれました。
子育てとの両立で変化した、仕事への取り組み方
―皆さんにとって働くとはどういうことですか?
高橋さん(以下、高橋) 私はこれまで、仕事とプライベートを比べたら、考えごとをしたり費やす時間のほとんどが仕事に関わることでした。でも、今はまだ子どもが小さいので家族との時間も必要です。最近の私は、仕事と家族のバランスを1週間、1日の中でとりながら生活していて、それが自分の中でちょうどよいバランスになるようにがんばっているところです。家族には、仕事をしている姿を見て応援してほしいし、職場の人には仕事以外にも大切にしているものがあるんだなと思ってほしい。仕事とプライベートの両軸が揃って今の自分が成立しているんだと考えるようになりました。これも出産と育児を経験したからこその変化ですね。
松岡さん(以下、松岡) 私も今は子どもが第一ですが、これからも仕事はしていきたいし、子どもに働いている姿も見てほしいなと思います。
矢野さん(以下、矢野) 私は、働くことは自分の人生を豊かにしてくれてると思うんです。仕事では多くの出会いがあるし、新たな発見も自分一人ではできない体験もたくさんあります。私は家庭があるから、仕事も頑張ろうと思えるし、両方を頑張ってる今の自分が好きだなと思えます。
高橋 アトリエに一人でいた若いころと同じように何日も家に帰らず徹夜で仕事をする、みたいなことは体力的にも気力的にももうできないと思うんです。仕事に向き合える時間が限られるからこそ、ithの代表として自分にしかできないことに集中したい。今の私にとってそれが理想の働き方です。
―再び働き始めてから、ご自身の中で仕事に対する取り組み方や意識に変化はありますか?
松岡 私は復帰前と同じモチベーションで仕事をしているつもりです。ただ就業時間が限られているので、仕事の段取りは以前にも増して気をつけています。あと出産後は少々のことでは動じなくなったかもしれません(笑)。
高橋 出産前の私は仕事中心で、それが苦ではなかったのですが、今は自分でやるべきことと他の人に任せることをはっきり分けるようになりました。より自分の仕事に集中できるようになったのは、私の中で大きな変化ですね。
矢野 私も限られた時間で何ができるか、常に仕事の段取りを考えるようになりました。
高橋 私は新人のつくり手たちに対する気持ちも変わったかもしれません。親の手伝いが必要な小さな子どもと違って、入社したらたくさんのことを自ら学び、ithらしく振る舞おうとする姿勢に本当によく頑張っているなぁ、って(笑)。
この先も、家族に誇れる仕事を続けていきたい
―今後、皆さんが叶えたい夢はありますか?
高橋 仕事の目標としては、この先、お客様のお子様たちがithで指輪を作ってくれたり、ithで働きたいと思ってくれたら嬉しいですね。あとは、ithについて詳しい人や将来を真剣に考えられる人をもっともっと増やしたい。そうすれば安心して任せられることも多くなるし、ブランドとしてもチームとしても強くなると思うんです。
松岡 私は、つくり手として考えたら、一人でも多くのお客様がハッピーだと思ってくれたら嬉しいし、それが幸せかな。あとは娘に働いている姿を見せることですね(笑)。個人的には、洋服を作ることが好きなので、私が作った洋服を欲しいと言ってくれる人がいたらいいなと思います。ただそのために一歩踏み出す勇気がまだなくて…。その勇気があれば、何か変わるのかなと思います。
矢野 私もこの先も仕事を頑張る自分でいたいです。あとithでは産休や育休を取得するスタッフがまだ少ないので、私の働き方がひとつの参考例として励みになってくれたら嬉しいですね。そのためにも、今は仕事と育児を両立し続けていくことが必要かなと思ってます。あとは、ithで銀婚式の指輪を作ることも私の夢です(笑)。
キャリアの可能性を広げる“自分の強み”
―この先、産休や育休を考えているスタッフたちにアドバイスはありますか?
高橋 高橋 復帰は“自分の思いだけで叶うものではない”と思うんです。夫婦の仕事のスタイル、子どもの性格や保育園などを含めたサポートしてくれる人の存在などが組み合わさって、ようやく叶えられるものだということは知っておいてもらいたいですね。
松岡 私はつくり手としてアトリエ復帰を考えているなら、みんながサポートしてくれるので、心配しないで戻っておいでと言いたいです。
矢野 私の場合、人事やマネージャーたちが親身に相談に乗ってくれて、復帰後の働き方を考えてくれました。復帰に不安はあると思うけど、会社は戻る場所を整えてくれるので、安心してほしいです。
高橋 高橋 まだ小さな会社なので前例も少ないけど、その分、これからのことを柔軟に考えられる会社だと思います。だから、今、自分が思い描く復帰プランがあるなら、それは遠慮せずきちんと伝えてほしいですね。
矢野 あとは自分の気持ち次第ですね。
高橋 そうですね。あと自分の強みがたくさんあると復帰の選択肢は広がります。矢野さんも前職で事務の経験があったから、つくり手として復帰するだけでなく、バックオフィスで働く選択肢も提案されました。自分の持っている能力がたくさんあれば可能性が広がるので、今、何をしておくかがすごく大事だと思います。前職の経験はもちろんですが、ithの中にも接客以外の復帰につながる業務があるかもしれないし、もともと持っている素養も活かせるかもしれません。復帰後の働き方の選択肢を増やすためにも、自身の強みをしっかり磨いてほしいと思います。
写真左:矢野さん[戦略企画室]
写真中央:松岡さん[大宮アトリエ]
写真右:高橋さん[ithブランド代表]
【プロフィール】
高橋さん[ithブランド代表]
2014年、ジュエリー職人としてith吉祥寺アトリエを構え、接客と指輪づくりの両方に携わる。現在も週末は自らアトリエで接客を行うなど、ithを最前線で体現する。指輪は「着ける人こそが主人公」ということを大切に考えており、オープン当初からお客様のために何ができるかを常に考え続ける姿勢は変わらない。2021年8月から産休を取得し、2022年6月に復帰。3歳の女の子の母として、現在はワークライフバランスを取り入れた働き方へのシフトチェンジを模索中。
矢野さん[戦略企画室]
2018年9月入社。幼少期からウエディング業界に興味があり、お客様の幸せに寄り添う仕事がしたいと、フリーペーパーの広告企画営業からithへ転職。横浜元町アトリエでつくり手としてキャリアをスタートし、吉祥寺アトリエの主任を務め、実績を重ねる。2021年1月より産休を取得し、2024年4月に戦力企画室の一員として復帰。3歳の男の子と1歳の女の子の育児と仕事の両立を図る。
松岡さん[大宮アトリエ]
元々顧客としてithを訪れ、ブランドの思想や温かな接客、雰囲気を気に入り、結婚指輪をオーダー。その後、自身もお客様とともに大切な結婚指輪をつくり上げる仕事を志望し、2018年11月入社。趣味は洋服をハンドメイドすること。2020年7月より産休を取得し、2022年10月にithでは初めてとなるのつくり手として現場復帰。現在は週3日アトリエに勤務しながら、4歳の女の子の子育てに携わる。