こんにちは、つくり手の前堂です。
“指輪づくり” について、私たちithのつくり手が工房で学ぶリアルな様子をお伝えする《つくり手指輪制作ブログ》シリーズをお届けいたします。
(詳しくは イントロダクション記事 をご覧ください)
記念すべき最初のテーマは、彫り模様のお話です。職人から工具を整える工程から教わりましたので、ぜひお付き合いください。
アニスの彫り模様
アニスとは、ハーブのスターアニスをモチーフにした彫り模様で、ithの結婚指輪《アニス》に和彫りで施す放射状の模様です。
“和彫り”という伝統技法は、彫った面がキラリと宝石のように光を反射するのが特徴です。
どうやって彫っているのか職人の新居さんに尋ねたところ、「まずは彫るための工具を研ぐところからやってみる?」と実際に工具を研がせてもらいました。
《アニス》を彫るには、鏨(たがね)という細く尖った工具を2種類使います。
工具店で購入してそのまま使用するのではなく、職人はそれぞれ使いやすいように調整して、自分専用の鏨にするのだそうです。まずはお手本を見せてもらいました。
研ぎ機に鏨を押し当てて、角度や面の調整をします。
「綺麗に彫るためには、まず鏨を綺麗に研ぐこと。研いだ面が綺麗に仕上がっていないと、アニスならではの輝きにならないんだよ」
私も見様見真似で研いでみます。
研いだところに余分な面が出来ていないか、左右対称になっているかどうか、研ぎ跡のすじが残っていないかどうかなど、ルーペで確認しながら研いでいきます。
目で見て確認するのはもちろんですが、鏨を押し当てるときの指の感覚、研いでいる時に微かに聞こえる音から、上手くいっているかどうか少しずつ分かるようになってきてワクワクしました。
ひたすら感覚を研ぎ澄まして、研ぐ、研ぐ、研ぐ。
やっと1本目を研ぎ終えたと思ったら、3時間ほど経っていました。
研ぎ終えた後に微調整してもらった鏨は、キラキラと輝いて眩しいくらいの仕上がりに。
『綺麗に研ぎ上がると、宝石みたいに輝くんだよ。良い職人は工具を丁寧に扱うし、工具を見ると職人の力量が分かる。ベテラン職人の作業机を覗いてみてごらん、たくさんの宝石が並んでるように見えるから』
と、新居さんが嬉しそうに教えてくれました。
キラキラと丁寧に研ぎあがった工具たち。
ずらりと並んだ姿は、本当に宝石のようで、工房にお邪魔するのが更に楽しみになりました。
写真だと伝わりづらいのが悔しいのですが、ご希望があれば平日に工房見学や、指輪制作体験もできますのでつくり手へお声掛けください。是非、吉祥寺に覗きにいらしてくださいね。
やっと鏨を研ぎ終えたところで、気がつけばもう夕方。本日の作業はここまで。
彫り模様の修行はまだまだこれからです。
- #2へつづく-
つくり手 前堂