ithは6月4日で11周年を迎えました。
アトリエへお越しくださったお客さま、指輪に携わる仲間たちのおかげでこの日を迎えることができました。ありがとうございます。
今までの感謝の気持ちを持ちながら、これから新しい1年を過ごしていきたいと思います。
毎年この時期には、ithのはじまった最初の頃とこれからのことを考えます。
‘お客さまが本当にいいと思える指輪をつくりたい’という気持ちで2014年にはじまったithは、吉祥寺の駅から離れた路地裏にひっそりと構えたアトリエでした。
今日はアトリエを訪ねてくる人はいるかしら、と黙々と作業をしながらお客さまを待つ日々。静かな場所に1人でいる心細さはあるけれど、目の前にある制作中の指輪に向き合うことで自然と不安な気持ちは薄れ、制作に没頭するという毎日の繰り返しでした。
最初の頃のことを改めて思い返すと、苦労した指輪の制作のことや自分の発想にはないデザインがお客さまのアイデアから生まれたことなど、指輪という‘もの’に関する記憶が強く残っています。お客さまとの繋がりが指輪を通じて感じられ、少しずつ自信がついていきました。
今の自分はあの頃とどう変わったのかを考えてみると、指輪をつくるために作業机に向かって手を動かすのはとても限られた時間になりました。3歳の娘がいることで時間の制限ができたことも大きいですが、ithがどうしたらithらしくいられるかを考える時間が増えました。
頼りになる社内外の職人やつくり手など、最初の頃には想像していなかったいろいろな経験や個性を持った仲間が加わり、たくさんの人がこのブランドを支えている。
11周年を迎えてたくさんの仲間に恵まれたからこそ、自分は’作る’ことを小さく続けながら、別のことでもお客さまの本当にいいと思える指輪に辿り着くためにできることをしなくちゃ、と思うようになり、形があるなしに関わらず何かを’つくる’ことでお客さまに寄り添うブランドを守っていきたいんだと気づきました。
特に最近情熱を注いでいるのが、台湾アトリエのつくり手との関係です。海外にはシンガポールと台湾にithのアトリエはありますが、今まで積み重ねてきたithの考え方や大切にしていることがなかなか伝わらず、苦労をしていました。
台湾を訪れた時に、「日本と違って台湾のアトリエはできたばかりで、認知もされていない。長年ある他のブランドのほうが接客は有利なんです」と1人のつくり手から言われた言葉は今でもグサっと心に刺さって忘れられません。私は、何もないところから歴史を積み重ねていくことを誇りに思ってほしいと思っていたし、ithの他にはない強みをつくり手1人1人が体現できれば台湾でも受け入れてもらえるはずと考えていた気持ちが、その一言で揺らいだこともありました。
でも、オープンから2年が経った今年5月。台湾にithができた時からずっと、「結婚する時にはここで指輪を作りたいと思っていました!」というお客さまがアトリエを訪ねてくださいました。こういう嬉しいことがもっともっと増えて、現地のつくり手のやり甲斐に繋がったらいいなと思っています。
1つの指輪を完成させるよりも、本当にたくさんの時間を費やしてようやく見えてきたつくり手の成長という明るい兆し。
今でも文化の違いによる苦労はありますが、私も現地の考え方や特徴をできる限り体感しながら、ithの指輪や世界観を好きになってくれる人が広がっていくこと、後に残る大切なものを築けるように熱い気持ちを持ってこれからも関わっていきたいです。
先日、職人として仕事をしていた時の先輩と久しぶりに会う機会がありました。その先輩は仕事が早いし、デザインや加工の方法など新しいアイデアを考える力も持っている職人でした。さらに周りにいる人をおもしろい話で楽しませることもできて、当時の私からすると何でもできる憧れの人でした。
そんな先輩へ近況を話す機会があった時に、「ものを作るのが好きで、ひたすら作業していたのにずいぶん変わったなぁ!」と言われました。
今の自分の役割って何なんだろう?ものづくりは本当はそんなに好きじゃないのかな?と思ったりすることもあったので、前と変化していることをポジティブに捉えるきっかけをもらうことができました。 同じ工房で仕事をしていた時は、先輩の背中を見ていつか追い越したい!と思っていた頃が懐かしく、20代の頃思い描いていた自分の想定を超える今を伝えることができて、嬉しかったです。
これからの1年では、さらにithらしさを深く探究していきたいと思います。毎日あっという間に過ぎてしまうけれど、また来年には変化をお知らせできるよう過ごしていきます。
これからも、どうぞよろしくお願いします!
ith11周年を記念して、2025年6月7日(土)、8日(日)、14日(土)、15日(日)の4日間に来訪プレゼントとして一輪ブーケをご用意しました。ささやかですが、メンテナンスなどでもお気軽にアトリエへお越しいただければ幸いです。お待ちしています。
ith 高橋亜結