つくり手の仕事に就いてから、
“結婚するということ”
“先祖から特別な物を受け継ぐということ”
に対して、憧れとは違う、
何か特別な感情を持つようになりました。
「目の前にいるお二人は、
これからどんな未来を過ごすのだろう?」
「受け継いだダイヤモンドやジュエリーには、
どんな想いが宿っているのだろう?」
他にも、
この仕事をしていなかったら
考えることがなかったであろう、
素敵な思いにも出会えるようになりました。
——
私事ですが、昨年節目の年齢を迎えました。
ありがたいことに、
ここまで多くのことを経験させてもらい、
時には強く、時には立ち止まりながらも、
今まで生きてくることができました。
それは、言うまでもなく
家族をはじめ、私に関わってくれた人たちの
支えがあってこそのこと。
そんな節目の年齢に、
両親からのプレゼントは、
いちごのケーキと、
父から母へ贈られた婚約指輪。
「こんな特別なものを受け継いでいいものか」
とても悩みましたが、
感謝の気持ちと強い意志を持って、
両親からの思いを受け継がせてもらいました。
この特別な思いを宿らせた先は《アンティーコ》
・4本の爪は、喜怒哀楽を共にした家族の証
・途切れることなく施したミル打ちは、家族のつながり
ここに書き綴っていて、
少し恥ずかしくなってしまうような、
私の思いも込めた、
特別なデザインに仕上げていただきました。
完成した指輪との対面は、
私たち家族にとっても特別な時間となりました。
この特別なリングと、
これからの未来を強く。時には立ち止まりながらも、
日々を乗り越えていきたいと思える、
特別なアニバーサリーリングになりました。
この場をお借りして、
リングを制作してくださった職人の皆さま、
デザインを一緒に考えてくれた先輩つくり手に、
心から感謝申し上げます。
ずっと元気でいてほしいけれど、
少しずつ小さくなっているようにも
見えてしまう両親を、
私が支える、と言ったら大袈裟かもしれませんが、
まだまだ一緒に楽しく過ごしていけるように。
いままでも、これからも、
ありがとうの気持ちを込めて。
つくり手 衣笠